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【進撃の巨人】ガラスの微笑

第1章  


 彼女がいなくなってから一ヶ月が過ぎた頃、エルヴィンの執務室に呼び出されたリヴァイは、コンコンと小さくノックをして、扉を開けた。

「やぁリヴァイ、呼び立ててすまなかったね」

 こちらを向いてニッコリと笑ったエルヴィンの顔は、心なしかいつもよりも明るいように感じられる。

「実は、少し前に君に預かってもらった彼女のことなんだ」

 エルヴィンの言葉に、リヴァイの眉がピクリと上がる。

「・・・何かあったのか?」
「あぁ、それがとても不思議な話なんだがね。彼女はとある貴族が所有しているのだが、何しろあの精巧さだから、彼女を作った人形師が定期的にメンテナンスを行っているんだ。だが、人形師が手入れを行ったその日の夜から、人形師の夢には毎晩彼女が現れて、あの青い瞳からポロポロと涙を流して泣くんだそうだ。どうしたのだ、と聞いても彼女ただ泣くばかりで、何も答えない。気になった人形師は、もう一度彼女の様子を見に屋敷へ行った。すると、とても信じられないことなんだが、彼女は両目から涙を流して泣いていたというんだ。びっくりした人形師は、すぐさま持ち主の貴族にそのことを報告した。最初は全く取り合われなかったが、その後、何人もの使用人が彼女が泣いている姿を目撃して、ついにその主人もその場を目の当たりにしてしまった」

 少し息をついて、エルヴィンがリヴァイを見つめる。

「・・・で、それからどうなったんだ」

 濃いクマのできた暗い目元で、リヴァイも見つめ返した。

「気味が悪くなった主人は、彼女を人形師のもとに戻したんだ。あれほどの資金を投じて作り上げた彼女を手放すなんて、よほど驚いたに違いない。手元に戻ってきた彼女に、人形師は問いかけたそうだよ。なぜそんなに泣いているのか、と。もうお前は誰の物でもない、好きに生きることができるんだよ、と。すると彼女はたった一言、ある人物のもとに行きたいと言ったんだ」

 じいっと、青空のようなエルヴィンの瞳がリヴァイを見つめる。
 その視線を受けて、リヴァイはポカンと口を開けた。

「さぁ、リヴァイ。早く部屋に帰りたまえ」
「・・・っ」

 弾けるように勢いよく扉を開けると、リヴァイは部屋を飛び出していった。
 開け放たれたまま微かに揺れている扉を見て、エルヴィンは小さく笑った。

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