【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第5章 菊合
下人が押し開けたドアから入ってきたのは赤葦。
広間の大時計は、12時45分を指している。
しかし、その時間にしてはあまりにも赤葦の身なりは崩れていた。
普段はシャツのボタンを一番上まで留め、黒ジャケットをきちんと羽織っている男が、みぞおちまでボタンを外し、しわくちゃのジャケットを小脇に抱えている。
そして何より、酷く疲れたような顔をしていた。
「・・・おかえりなさいませ」
先に挨拶をしたのは京香だった。
前から家令が歩いてくれば、家政婦長は立場上、道を譲って頭を下げなければならない。
だが、そこに八重がいるならば話は別だった。
「八重様・・・」
赤葦は八重の顔を見るなり、眉間にシワを寄せた。
億劫そうに小さく会釈をすると、八重の道を塞がないように廊下の端に寄る。
しかし、八重をそのまま行かせるつもりはないようだった。
「八重様、お待ちください」
前を通り過ぎようとした八重を赤葦が呼び止める。
「お話があります。今から書斎へ来ていただけませんか」
「話・・・?」
朝から不在にしていた理由でも話そうというのか。
「・・・・・・・・・・・・」
それにしてもなんてだらしない恰好だろう。
シャツははだけているし、風呂に入ってきたのか髪も濡れている。
さらに徹夜でもしていたのか、目の端が真っ赤に染まっていた。