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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合






梟は墓を掘る。

死んだ駒鳥の罪や秘密が、誰の目にも触れないように深く、深く。


───Who'll dig his grave?



赤葦は筆を置き、光太郎に目を向けた。

「手紙はだいたい書き終わりましたが、もう一文、付け足しますか?」
「一文?」

招待を断る以外に何かあったっけ? と首を傾げている光太郎に、赤葦は溜息を吐きながら口を開いた。

「夜会で日美子様を侮辱する発言をなさったことに対する苦情です」

「赤葦・・・」

光太郎は驚いたように目を丸くしたが、反対に赤葦は目を吊り上げている。

「家令としては、やはり先代の奥方への侮辱を見過ごすことはできません」

手紙の最後に夜会での件を遺憾に思っている旨を付け足せばいいだろう。
家格が下だろうと、尊厳を守ることは大事だ。

しかし光太郎は首を横に振った。

「ありがとな、赤葦。だけど、それはいいよ」

「光太郎さんは日美子様が不貞を働いていたと言われて腹が立たないのですか? 八重様ですらあんなに・・・」

「そりゃもちろん、腹は立ったよ。でも、“俺”はそのことについて何かを言える立場じゃない」

その瞬間、赤葦は心臓が一瞬にして凍るような感覚を覚えた。
もしかしたら今・・・自分は一番言ってはいけない言葉を口にしたのではないか・・・?

「あ、あの・・・俺・・・」
「あー、今のは別に深い意味はねーから」

光太郎は赤葦の肩に回していた腕を解くと、背筋を伸ばしながらニコリと笑った。


「それに、“黒尾”が夫人達を窘めてくれたっていうじゃん。俺はそれで充分」


多分、八重と一緒にいたところで、自分も牛島夫人達の陰口を止めることはできなかっただろう。

黒尾だから・・・

あの時、八重を助けることができた。








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