【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第5章 菊合
使用人達は皆、しきたりを破って八重と夕食を取っただけでなく、食事が済んでもいないのに出ていけと言う光太郎に戸惑った表情をしていた。
しかし、闇路が静かに頷いて命令に従ったのを見て、他の使用人もそれに続く。
そしてダイニングルームには光太郎と八重、そして赤葦と京香だけになった。
「八重」
光太郎はナイフとフォークをテーブルに置き、正面に座る八重を真っ直ぐと見つめた。
「この家の人間はみんな、俺の言うことに従う」
赤葦も京香も。
そして・・・
「八重、お前もだよな?」
言葉だけ聞けば、横暴にすら聞こえるかもしれない。
しかし、八重が顔を上げると、光太郎はニコニコと微笑んでいた。
赤葦は光太郎の数歩後ろ、京香は八重の後ろの壁で、光太郎の言葉を否定することなく立っている。
そして二人の視線は今、光太郎ではなく八重に向けられていた。
「これを聞くのは最後にする。腹を決めたことなら、何度聞いたって無駄だろうし、お前を追い詰めるだけだから」
「・・・・・・・・・」
「もしこの家の誰かに気を遣って理由を言えずにいるなら、それは必要のねぇことだ」
光太郎の笑顔は不思議だ。
まるで赤ん坊のそれのように、周りの人間もつられて笑顔になってしまう。
・・・きっと裏表がないからなのだろう。
彼の笑顔にも、彼の言葉にも。
「俺は八重の家族だからお前が抱えているものを一緒に抱えたい。赤葦と京香はそんな俺達を支えてくれる。何があっても、死ぬまでずっとな」
───だから安心して話してくれ!
その名のごとく、光のような人。
温かくて、力強くて、一緒にいるだけで鼓舞される。
「分かりました・・・お話いたします」
八重は深呼吸を一つした。