• テキストサイズ

【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合




「弟の過ぎた発言をどうかお許しください、八重様」

秋日和も台無しにする重苦しさの中、京香が八重に深々と頭を下げた。

「家政のため、牛島家には懇意にしていただかなければという焦りから、京治はあのような態度を取ってしまったのだと思います」

「大丈夫。事情は私も理解しているわ」

牛島侯爵は農商務省で副大臣を務めている。
木兎家が進める旧領地での殖産興業のためにも、こんな些細なことで牛島夫人の怒りを買うわけにはいかない。

分かっている・・・

分かっているけれど、やはり夜会での日美子に関する発言は許せるものではない。


「大丈夫です、八重様。私は何があっても八重様の味方です」

「京香さん・・・」

京香は姿勢を正し、真っ直ぐと主人を見つめた。
使用人として御家のことは何よりも優先すべきだと心得ているが、それでも自分の使命はこの令嬢を守ること。


「八重様が何故、牛島夫人と距離を置きたいのか・・・その理由を問いただすこともいたしません」


きっとこの間の夜会で何かを言われたのだろう。
嫉妬と嫌味の巣窟では、一輪花のような八重などすぐに餌食になってしまう。
汚い感情から八重を守るためにそばを離れないようにすると光太郎は言っていたが・・・


「理由を明かせないのは、そのご決断が旦那様や使用人を気遣ってのものだということ」

「・・・・・・・・・」

「弟の言うように“納得のいく理由”が必要だとしたら、八重様が理由を隠していらっしゃるその事実だけで私は十分でございます」


赤葦は頑固なところがあるが、光太郎に対しては従順だ。
光太郎さえ納得させることができれば、赤葦が何と言おうと八重の希望を叶えることができる。


「───私にお任せください、八重様」


しかし、そう考えているのは京香だけではなかった。











/ 287ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp