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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合




空は秋晴れ、気持ちのいい日だ。
しかし赤葦の眉間には深いシワが寄せられている。

「八重様は花会に出席してください。華道も変わらず、定子様に師事していただきます」
「赤葦。私はもう行かないと決めたの」
「ならば、私が納得できる理由を仰ってください」

八重と同様、赤葦も引く気が無かった。

牛島夫人に華道の指南役を頼んだのは赤葦だ。
花会を欠席し、さらに師事することまで辞めれば、定子の不興を買うことは必至。

「理由は・・・どうでもいいでしょう。私の気が進まないだけです」

理由を話せば、日美子が夜会で何と言われていたかまで明かさなければならない。
日美子を敬愛する京香達を傷つけたくはないから、絶対に話す気は無かった。

しかし、赤葦がそのことを知る由もない。


「・・・まるで子どもですね、話にならない」


青白い炎のような怒りの色を瞳に宿らせながら八重を見据える。


「私は木兎家の家令です。この家のことを決めるのは、この私です」


───貴方の意思は必要ない。

赤葦の瞳は、はっきりと八重にそう告げていた。
すると、それまで黙っていた京香が口を開く。


「京治、落ち着きなさい」


赤葦の目がゆっくりと姉の方に向けられた。
相変わらず怒りの色を宿したままだが、京香は怯むことなく家令と木兎家令嬢の間に割って入る。


「私の役目は家政婦長として八重様をお守りすること。それを決めたのは他でもない、“家令殿”でございます」

「・・・・・・・・・・・・」

「八重様のご意思に反することならば、私は八重様に花会へご出席いただくことを反対いたします」


八重は驚いていた。
普段は柔和な京香が、平手打ちを与えるような語勢で赤葦に反論している。
流石の赤葦もそんな姉には逆らえないのかしばらく黙っていたが、ここはひとまず引き下がることにしたらしい。


「招待状の返答期限はまだ先です。この話はまたにしましょう」


それだけ言い残すと、険しい表情のまま踵を返し、屋敷の中へ戻って行った。









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