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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第4章 白薔薇





「八重!!」

明るく張りのある声が、八重と黒尾の間に走っていた緊張を一瞬にして解く。

「光太郎さん・・・!」
「どこを探してもいないと思ったら、こんな所にいたのか」

額が少し汗ばんでいるのは、酒のせいだけではないだろう。
光太郎と社交辞令を交わそうとする来賓達、ダンスの誘いを待つ女性達の視線から逃れてくるのも一苦労だったに違いない。

「よう、木兎」
「黒尾!! なんだ、お前もいたのか」
「なんだとはなんだよ」

ニヤニヤと笑いながら光太郎の膝裏に蹴りを入れる黒尾はすでに、先ほどの謎めいた空気は無かった。

「せっかく八重ちゃんと話していたのに邪魔すんじゃねーよ」
「邪魔ってなんだよ! 八重をエスコートしているのは俺なの!」
「長時間放っておいたくせに、よく言うぜ」
「だ、だって仕方ねーだろ! 貴族院の人に捕まってたんだから」

同級生というのもあるのだろうが、光太郎と黒尾の間に身分の壁は無いようだ。
騒がしい会話はこの夜会にそぐわないが、大人びていても二人はまだ十八歳の学生。

年相応の会話をしていることに、八重は安堵すら覚えていた。


「それより八重と何を話していたんだよ、黒尾」

暗く静かなバルコニーに二人きりでいたことが気に入らないらしく、子どものように頬を膨らませている。
おおらかなように見えて、その実、嫉妬しやすい性格であることを知っているのか、黒尾はさらに煽るように言った。

「それは俺と八重ちゃんだけの秘密。お前には関係ない」
「はぁ?!」

黒尾は八重を見て、片目をつぶってみせる。
バルコニーでの会話については光太郎に知られないようにしよう、ということなのだろうか・・・?






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