【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第4章 白薔薇
「やはり御二人が不義のご関係にあるという噂は本当なのかしらね」
その瞬間、八重の心臓がドクンと脈打った。
今・・・自分は聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか。
不義の関係・・・?
姉の京香と弟の赤葦が、道ならぬ恋の仲であるということか。
木兎家に来てまだ日が浅いから、京香のことも赤葦のことも表面上でしか知らないが、そんな素振りはまったく無かった。
少なくとも自分の目の前では、だ。
でも・・・
確かに京香を見つめる赤葦の瞳は優しい。
しかも時折り、いたわるように姉の背中をさすっている。
そうか、彼はあのような振る舞いもすることができるのか。
「この間も夜中に赤葦様が西館に入っていくのを見た女中がいるって」
「赤葦様のご寝室は本館にあるのに?」
「だから京香様のお部屋を訪ねていたんじゃないかって」
八重はチクリとした痛みを胸に覚えた。
赤葦も使用人とはいえ、木兎家の家令だ。
彼の名誉が損なうような噂話をこれ以上続けられては困る。
と、その時だった。
「こらこらー、無駄話をしてちゃ駄目だよー」
ゆったりとした口調ながら、二人を窘めたのは上女中の雪絵。
「ゆ、雪絵さん!」
「油を売っていないで、八重様のお着換えを持ってきて。あと、汗をかかれていると思うから手ぬぐいも」
「はい、申し訳ございません!」
女中達がバツ悪そうに出ていくと、雪絵は衝立の中にいる八重の所にやってきてニコリと笑った。
「気にしないでください。あの子達が赤葦と京香さんについて言っていたことは事実無根の噂話でしかありませんから」
「雪絵・・・」
白福雪絵は年齢こそ十八と若いが、幼い頃から木兎家に出入りしているため、光太郎とは幼馴染のような間柄。
雪絵の他にも、光太郎や赤葦と親しくしている使用人がこの屋敷には数名いた。