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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第7章 冬の蝶




一方で八重の方はというと、あまりにもすんなりと願いが聞き届けられたことに驚き、おずおずと光太郎を見上げるばかり。

「本当に・・・京香さんを連れていっても良いのですか? 幼馴染でもあったのでしょう?」

「んー? じゃあ、やっぱし駄目!」

さらにキョトンとしている八重の頭をポンポンと叩きながら、光太郎は少しずつ明るさを増していく東の空にその真ん丸な目を向けた。


「八重も、京香も、ウシワカのところになんて行かせたくない。二人ともずっと俺のそばにいて欲しい」


などという我儘は許されないことなど分かっている。
分かっているからこそ・・・


「───なんてな、うそうそ!」


八重、俺はお前を信じる。
京香、俺はお前を縛らない。

二人を自由にしてあげられない代わりに、俺がお前たちにしてやれることはそれぐらいしかないから。


「家のことは心配するな。赤葦がいるし、何よりこの木兎光太郎様が当主なんだから!!」


大きな胸板を膨らませ、ふんぞり返る光太郎。
これほど長身で美丈夫な彼ならばすぐに良縁にも恵まれるだろう。


「・・・ありがとうございます、光太郎さん」


やはりこの人と話していると不思議と安心する。
八重が表情を緩めた途端、光太郎も気が緩んだのか、ここが真冬の外であることを思い出し盛大なくしゃみが飛び出した。

「へっくしゅ!! うー、寒くなってきた」
「そんな恰好をしていれば当然です。早く暖炉で身体を暖めましょう」

先ほどの立派な振る舞いはどこに消え失せたのか、竹刀を握りしめながら子どものように鼻水を垂らしている木兎家当主。
その横で八重は久しぶりに声をあげて笑っていた。


「忘れるな。どこに嫁いでも八重は俺の家族だ」


差し出された手は、英国の田園を一緒に歩いた母のそれよりも大きく。
繋いで雪の積もる道を並んで歩けば、不思議と寒さなど立ち消えて、代わりに優しく温かな火が心の底に灯るようだった。








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