【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第7章 冬の蝶
「八重様の侍女として牛島家に行く? あちらには木兎家以上に多くの使用人が居ます、必要ないでしょう」
「私は八重様のおそばで仕えることができるなら、下女でも構わないと思っています」
その覚悟は赤葦の怒りに火を注いだようだ。
僅かながら呼吸も荒くなっているのに京香は気づいていた。
「下女・・・? 貴方が水汲みや飯炊きをするというのですか?」
「それしか八重様のおそばにいる方法が無いというのなら、私は喜んで水汲みや飯炊きをします」
曲がりなりにも由緒正しき武士の血筋である京香が、たとえ侯爵家であろうと下女になるだと?
父が知ったら何と言うだろうか。
先祖にどう顔向けをすればいいというのか。
「その申し出は木兎家家令としても、赤葦家長男としても、到底許せるものではありません」
「京治・・・!」
赤葦は足早に京香のそばに歩み寄ると、細い右肩を強く掴んだ。
もし京香が八重とともに行くとなれば牛島家だって歓迎するだろう。
そうでなくとも、上女中として京香を受け入れるよう、牛島夫人に掛け合うことだってできる。
しかし、京香が木兎家を離れることなど今まで考えたことも無かった赤葦は、語気を強めながら姉ににじり寄った。
「俺は姉さんまで牛島家に渡すつもりはありません!」
「それを決めるのは貴方ではないでしょう。八重様が私に一緒に来て欲しいと仰ったのです」
「たとえそうであろうと、赤葦家の人間が木兎家以外の家に仕えるなどあってはならない!」
「八重様は木兎家の御令嬢です!」
健気に光太郎を想い、これまでほとんど縁の無かった本家のために牛島家に嫁ぐことを決めた。
光太郎だって京香が一緒に行くとなれば少しは安心するだろう。