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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第7章 冬の蝶







八重が目を覚ましたのは、その日の夕方近くだった。

「ここは・・・私の部屋・・・?」

カーテンの隙間から薄っすらと差し込む夕陽が、英国風の壁紙を黄金色に照らしている。
シンと静まり返った部屋に使用人の姿は無く、代わりに西洋林檎が入った木箱がテーブルに置かれていた。

「・・・林檎なんて高価なもの・・・いったい誰が・・・」

倒れた自分を光太郎が気遣ってくれたのだろうか。
それとも赤葦・・・?

その名前を思い出した途端、再び胃の奥がムカムカとしてきた。

「もし赤葦が用意したのだとしたら、絶対に口にするものですか・・・」

朝食の席では醜態を晒してしまった。
そんな自分が恥ずかしく、またその原因となった赤葦への怒りが沸々と込み上げ、八重は頭までを布団ですっぽりと覆い隠した。


───赤葦・・・赤葦・・・なんという男なのだろう。

自分と同じ歳だが怜悧かつ冷徹、それでいて木兎家を守るという信念を強く抱く彼を尊敬していた。
社交界で認められるよりも、彼に認められれば本当の意味で“レディ(淑女)”になれるのではないかとすら思っていた。

だから、あのような凶行に及んだ赤葦をそれでも理解したいと思っていたのに・・・


“八重様ご本人が“何でもない”と仰っているのです、本当に何でもないのでしょう”


自分を凌辱したことなど、彼にとっては瑣末なことだったようだ。
“木兎家のため”という名目ならば、誰とでも情事に及ぶことができると言っていたが、これでは単なる色欲魔だ。


「うぅ・・・」


これからいったいどのような顔をして赤葦に会えばいいのか分からない。
嫌悪感で自分がどうにかなってしまいそうだ。

顔まで覆った布団のせいで呼吸が苦しくなり、布団を大きく返したところで、ドアをコンコンとノックする音が響いた。








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