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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第7章 冬の蝶




赤葦は一瞬、思考が止まりかけた。

この方は今にも倒れそうになりながら、それでも光太郎様に心配をかけまいとしているのだろうか。
そんなに・・・光太郎様のことが・・・

「八重!」

明らかに体調の悪い八重を支えるため、光太郎が立ち上がった。

2秒後、彼の腕は八重を支えるだろう。
そこからさらに1秒もかからないかもしれない・・・
そんな二人の、特別な感情が込められた視線が交わされるまでに。

駄目だ、光太郎様と八重様が結ばれてはいけない。

二人を止めるための猶予は“3秒”という数字を、導き出すまでにかかった時間は僅か0.5秒。

そこから行動に移すまでに3秒もかからなかった。

「八重様ご本人が“何でもない”と仰っているのです、本当に何でもないのでしょう」

それは発した本人ですら、喉がチクリと痛むほど冷たい言葉。
しかし、ここで光太郎が八重を抱きしめたりなどすれば、八重が抑え込もうとしている恐怖は安堵で一気に外に漏れだし、光太郎はそれを知ることとなるだろう。

そうなればもう、光太郎の耳に自分の声は届かない。


「ですが、念のため、医者を呼んでおきます。それでいいでしょう」


八重様、これは悪夢の続きです。


“俺がどのような“形”で、“何”を捧げようが、木兎家である限りそれを受け入れる義務が貴方にはある”


両手を口で覆いながら走り去っていく八重。
直後に廊下で人が倒れる音が響き、慌てた使用人達の誰よりも早く光太郎がそれに反応した。





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