【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第7章 冬の蝶
“恨むなら、貴光様の娘として生まれたご自分の運命を恨んでください”
あれはきっと、八重に向けて吐いた言葉ではない。
この世に生まれてしまった運命を一番恨んでいるのは他の誰でもない、赤葦京治本人だ。
八重と自身とを重ね合わせ、己の存在を正当化しようとしていただけだったのかもしれない。
「寒いな・・・」
いつになったら聞こえるのだろうか。
早春を告げる駒鳥の囀りは───
「誰が・・・コマドリを殺したのか・・・」
“私はこの歌が大好きよ”
「それは私、雀が言った・・・私の弓矢でコマドリを殺した」
“この歌を歌っている時だけ、私は本当の自分に戻れる気がするの”
「誰が・・・コマドリの墓を掘るのか・・・」
日美子様。
貴方が遺した美しい夢も、悲しい現実も、残酷な過去も、悲劇的な未来も、この私が葬ります。
「I, said the Owl, with my pick and shovel, I'll dig his grave」
それは私、梟が言った。
私のピックとシャベルで墓を掘ろう───
木兎家の豪奢な玄関ホールから去っていく足音が、冷たくどこまでも響いていく。
そしていったいどこから舞い込んできたのだろう。
赤葦と黒尾が先ほどまで対峙していたその場所には、一枚の鳥の羽が落ちていた。