【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第7章 冬の蝶
「俺はただ・・・みんなが本当に大好きだから・・・いつも笑っていてくれればいいと思っているんだ」
なのに、どうしてこうなってしまう。
八重も、赤葦も、黒尾も、そして・・・
“赤葦家に生まれ落ちたその日から、私は貴方のために生きているのです”
───京香も・・・
“光太郎さんと八重様は、私と京治の光です”
俺が不甲斐ないばかりに、いつもみんな辛そうにしている。
いつも苦しそうにしている。
俺の機嫌を伺い、少しでも俺が傷つかないよう、無理に笑顔を作りながら心の中では血の涙を流している。
でも・・・かおりだけはそんな俺を強い言葉で叱咤してくれる。
「かおり・・・お前だけは変わらないでいてくれよ」
するとかおりは切れ長の目を細め、化粧がはげるのではないかというほど大きな笑みを見せた。
「私をそんじょそこらの芸者と一緒にしなさんな。“社交界の華”光臣様に拾われ、今をときめく光太郎様はご贔屓の、“新ばし”一の芸者だよ」
目を背けたくなる光景があったとしても、私が舞うことで人々の視線をそこから離させてやろう。
花柳流家元の直弟子、立方(踊り手)のかおりは扇子を広げ、隣の座敷から聞こえる三味線の音に合わせて光太郎を鼓舞するかのように舞ってみせる。
その花のような姿に、光太郎の顔にも笑みが戻った。
「ああ、お前は新橋一・・・いや、日本一の芸者だ!!」
光太郎とかおり。
明治という激動する時代の中、後に水揚げされるまで芸者は陰ながら若き伯爵を支えていくこととなる。
東京六花街、新橋。
同時刻、美しい芸者達が客をもてなす桃源郷から離れた木兎邸では、赤葦が八重を凌辱していた───