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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第7章 冬の蝶




“黒尾も新橋に行こうぜ。すっげー面白いぞ!”

黒尾が芸者遊びをするようになったのは、光太郎に誘われたからだ。
金はあるが華族でない自分が、格式高い新橋の茶屋に出入りできるのも光太郎のおかげ。

「黒尾様、もう一献」
「お、どうも」

とはいえ、御座敷遊びに興じるでもなく、いつも脇息にもたれかかり胡坐をかきながら静かに酒を飲む黒尾は風情があり、芸者たちから人気があった。

「黒尾様はいつも光太郎様と一緒なんですね」
「ああ、俺とあいつは同じ穴の狢だから」
「へえ?」

黒尾に酌をしていた半玉が首を傾げた。
まだあどけなさが残り、振袖からちらりと見える細い手首が可憐だ。
“一本”(一人前)になる頃には大そうな美人になっているだろうと見惚れていると、その視線は十六歳の半玉にとって気恥ずかしいものだったらしい。

「私の顔になにかついています?」
「ん? 可愛いな~と思って見てただけだよ」

黒尾の言葉で、まるで茹蛸のように真っ赤になっている半玉。
ああ、なんて初心で可愛らしい。

本当に可愛らしいけれども・・・

秘めた恋で爛れたこの胸を癒してくれるほどではない、な。


「なぁ、木兎」

前触れもなく突然、新橋に行こうと誘いに来たのには驚いた。
黒尾家でも新年会をやっていたから苦労して抜け出してきたというのに、光太郎の方ははしゃぐばかりで何も語ろうとしない。
黒尾はとうとう痺れを切らしていた。

「お前も今日はウシワカの家の新年会に行っていたんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「何かあったな?」

黒尾が空になった徳利をコロコロと転がしながら問いかけると、かおりに膝枕をしてもらっていた光太郎がピクリと動いた。
すると、ただならぬ気配を察し、三味線を弾いたり唄ったりしていた地方(じかた)の芸者たちがススッと座敷の外へ退散していく。

そしてその場には光太郎と黒尾、かおりの三人だけとなった。






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