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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第7章 冬の蝶





こんぴらふねふね
おいてに帆かけて
シュラシュシュシュ

まわれば四国は
さんしゅう
なかのごおり
ぞうずさん
こんぴらだいごんげん
一度まわれば


東京の花柳界では格式の高い新橋。
“芸の新ばし”と賞されるほど新橋の芸者は踊りや技芸を誇り、目の肥えた高官や華族たちを楽しませる東京六花街の一つだ。

そして今宵も、新年の凍てつくような寒さを吹き飛ばす華やかな声が茶屋から響く。


こんぴらふねふね
おいてに帆かけて
シュラシュシュシュ


「きゃあ、また光太郎様のお手付き!」
「くっそー、またかおりに負けたぁ!」

お座敷唄に合わせて芸妓と椀を取り合う遊びに興じていた光太郎は、負けた勢いで畳の上にデンと“大の字”に寝っ転がり、対戦相手だったかおりの顔を恨めしそうに見上げた。

「かおり、本当に強ェな。少しは手加減してくれてもいいんじゃないの」
「光太郎様の癖をようく知っているからでございますよ。それに手心は嫌いでしょ」
「・・・うん、腹立つ。やっぱ勝負は真剣じゃなきゃ」

負けるたびに飲まされる酒のせいですっかりと出来上がっている光太郎の顔を、クスクスと笑いながら撫でてやるかおり。
亜麻色の髪に吊り気味の目が快活な印象を与える彼女は、半玉(見習い)の頃から光太郎と顔馴染みだった。
さらに親友が木兎家の使用人でもあるせいか、二人の関係は単なる芸妓と客と呼ぶには近しすぎるように見えるほど。

「もう一回! 俺が勝つまでやるぞ!」
「だめだめ、酔いつぶれたあんたを介抱するのは御免ですよ」
「かおりー」

甘えた顔でかおりの腰に抱き着く光太郎の後ろでは、黒尾が半玉に手酌してもらいながら酒を飲んでいた。

「おーい、木兎。かおりちゃんの言うことはちゃんと聞いとけ。この間みたいに泥酔して全裸にでもなってみろ、また赤葦に怒られるぞ」
「うるせー、赤葦が怖くて酒が飲めるか!」
「駄目だな、こりゃ」

一応お目付け役として来ているのだけどな・・・と、完全に目が据わっている光太郎を見て、黒尾は小さく溜息を吐いた。








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