【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
「私の義務・・・? 使用人から辱めを受けることがですか!?」
いくら家令だろうと、所詮は木兎家の使用人。
光太郎が気さくな人柄だから時折見せる赤葦の越権行為も許されているが、これは明らかに度が過ぎている。
「光太郎さんは貴方を信じている。だから私も貴方を信じたいのよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「離しなさい、赤葦・・・貴方は光太郎さんの信頼をも裏切るつもりですか?」
すると八重を抑えつける赤葦の手の力が一瞬弱まった。
それでも心までは動かせなかったようだ。
「───ご心配は無用です。そもそも私は信頼していただく価値の無い人間ですので」
その言葉は何故かとても悲しく響いた。
家令という職に就き、同年代の若者達のようにはしゃぐことも無く勤勉な赤葦が、自身を“信頼される価値の無い人間”だと言う。
八重は抵抗することも忘れ、“そんなことはない”と言ってしまいそうになった。
だが、その前に再び口を塞がれて何も話せなくなってしまう。
「貴方はただ、これから起こる事を悪夢だと思っていればいい」
自分が触れれば、大抵の女は喜んで股を開いた。
自分に触れさせれば、男でさえも興奮していた。
それなのに、今自分が組み敷いている女性は喜ぶどころか、屈辱で身体を震わせている。
本当は京香のように紐で両手を縛り上げれば楽なのかもしれないが、八重の肌には一切の傷を残したくはない。
「八重様、力を抜いてください。痣が残ってしまいます」
その気遣いは、八重をまだ主として見ているからか。
それとも証拠を残したくないからか。
いずれにしても、赤葦がこの行為を止める気が無いことだけは明らかだった。