【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
その後、新年会が盛り上がりを見せる一方で、若利と八重は奥座敷に呼ばれ、牛島夫人から縁談について聞かされた。
すでに若利からもそのことを聞いていただけに、縁談自体に驚きは無かった。
その時点で腹も決まっていたが、驚いたのは申し入れを受けるかどうかの選択は八重に委ねると光太郎が言ったことだった。
白銀の庭を望むことができる雪見障子で仕切られた座敷。
上座に牛島夫人、その右手前に若利。
光太郎は八重の左隣で正座していた。
“木兎伯爵は八重さんの選択を尊重すると仰ったわ”
思えば、結婚は家同士で勝手に決めてしまうのが通例の中、決断を自分に委ねてくれた光太郎には感謝しなければならない。
八重は真っ直ぐと自分の顔を見つめていた光太郎の眼差しを思い出し、赤葦の前で微笑んだ。
「あの時、私の守るべきものが分かった気がしたの」
“俺さぁ、お前を初めて見た時に思ったんだよね”
“お前を傷つけたくない、守ってやりたいって”
───それは私も同じです、光太郎さん。
「そして、私だからこそ守れるものがあると分かった」
“戦国の世から続く木兎家は、それだけで敬意を払うべき血筋。お前も、木兎光太郎も、絶対に埋もれさせてはいけない存在だ”
そう言ってくれた若利様ならきっと、光太郎さんと木兎家を守ってくれる。