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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞




「私です、八重です」

その声に赤葦の眉間がピクリと動く。
咄嗟に棚の上の時計へと目をやると、針は七時を指していた。

顔を合わせたくないから帰宅の際も出迎えなかったのに、わざわざ向こうからやってくるとは思わなかった。
溜息を吐きながら返事をせずにいると、もう一度ドアを叩く音がする。


「赤葦、いるんでしょう?」


寝たふりをするにはまだ早いし、相手が相手だけに無視をし続けるわけにもいかない。
赤葦は舌打ちをすると、とりあえず床に転がっていた徳利と猪口を拾い上げ、ランプに明かりを灯してからドアを開けた。

久しぶりに光を目にしたせいか軽く眩暈を覚えながら見ると、着物姿のままの八重がそこにいた。
恐らく帰宅してから真っ直ぐとここに来たのだろう。

「具合が悪い・・・わけではなさそうね。お酒を飲んでいたの? 珍しい」
「・・・お出迎えできず、申し訳ございませんでした」


───ああ、酒のせいだろうか、頭が痛い。


「いかがされましたか。貴方が私の部屋に来るなど、初めてのことですね」
「話があって来たのよ。帰って一番に貴方に伝えたくて」

その言葉に心臓がドクンと激しく脈打った。
表情も、声色も、冷静を保てているのに、洋服に隠れた肌から冷や汗が噴き出すような感覚がする。

「私に話? ところで、旦那様のお声が聞こえないですが、ご帰宅されているのですよね?」

いつもなら屋敷中に響く光太郎の笑い声が聞こえてこない。
八重がいるのだから帰宅しているはず・・・と首を傾げていると、八重は眉をハの字にしながら答えた。

「光太郎さんなら今夜は帰らないそうよ」
「帰らない・・・? 牛島家で何かあったのですか?」

酔いも一気に醒めるような事態に、赤葦の表情が急変する。
自分が家令になってからただの一度も、光太郎が行先を告げずにどこかへ行ってしまうことなど無かった。

牛島邸でよほどのことがあったのだろうか・・・







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