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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞







滅びゆく華族が不毛な存在ならば、そうなる運命に抗う術はあるのだろうか。
きっと彼は生まれた瞬間からそれを探し続けているのかもしれない。

この赤葦京治という男は───


「京治、こちらへいらっしゃい。いつまでもそこにいたら風邪を引いてしまうわ」


光太郎と八重がそれぞれの場所で選択に迫られている頃、赤葦は京香の部屋から冬の空を見上げていた。
室内だというのに、雪のせいか窓辺は吐いた息が白くなるほど温度が低く、組んだままの腕が心なしか震えている。

京香はストーブに薪をくべながら、そうやって一時間は動かずにいる弟に心配そうな目を向けた。

「・・・旦那様と八重様ならきっと大丈夫よ。貴方は何一つ、間違ったことをしていない」

その言葉に赤葦は初めて京香の方を振り返ると、感情を押し殺した瞳を僅かに揺らす。

まだ陽も高いこの時間から赤葦が京香の部屋を訪ねるなど、滅多に無いことだ。
二人ともまだ山のように仕事が残っているが、牛島家に向かう主人を見送った後、木兎家の家令は何も言わずに京香の部屋のドアを叩いていた。


「間違ったことはしていない・・・そうかもしれませんね」


赤葦は自嘲気味に笑いながら、京香に向かって右手を伸ばした。
“手を握ってくれ”、そういうことなのだろうか。


「でも、俺はきっと“正しいこと”もしていない」


八重が牛島家に嫁ぐよう仕向けたのは、赤葦の独断だ。
なのに光太郎はそれを咎めはしなかった。


「せめて旦那様が俺に怒りをぶつけていてくれたら良かったのに・・・」


その手が震えているのは寒さからだけではない。
事実、京香が両手で握ってやると、縋るように指を絡めてくる。


「旦那様が京治を咎めるわけないでしょう。だって貴方のすることは全て、木兎家のためを思ってのことなんだから。貴方は旦那様と八重様の幸せを願っている」


すると赤葦は京香の手を自分の口元に寄せ、その肌の匂いを嗅ぐように深く息を吸い込んだ。







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