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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞








華族が開く催しは常に政治的要素を含む。
牛島家の新年会も例外ではなく、政治家、高級官僚、そして外国の要人が多く招かれていた。

雪がちらつく中で到着した光太郎と八重を迎えたのは若利。

「よく来てくれた、木兎」
「おー、ウシワカ自ら出迎えてくれるとはな!」

若利は紋付羽織袴を着ているが、光太郎は喪中ということもあり黒の洋装。
長身の二人が礼装で並ぶとかなりの迫力があるなと八重が思っていると、その若利とふと目が合った。

「八重もよく来てくれた」
「御招きいただき、ありがとうございます」

鹿鳴館での夜会では英国式のお辞儀をしてみせたが、今は東京で有数の日本家屋を誇る牛島家の新年会だ。
白地に真っ赤な椿の絵が施された着物と薄桃色の羽織姿で立礼をすると、若利は僅かに顔をほころばせた。

「二人とも寒いだろう、中に入れ」

もしここが普通の社交界の場だったなら、光太郎と若利にエスコートされながら会場に入る八重に嫉妬の視線が集中していただろう。
しかし、爵位を持つ者かそれに相当する位の者しか招かれていない新年会では、むしろ光太郎と八重がその場にいることのほうが不自然で、会場に入った瞬間に向けられたのは好奇的な目。

その瞬間、光太郎の表情が変わる。


「───八重、お前は何を聞かれても答えなくていい。俺の後ろにいろ」


その言葉の意味はすぐに、光太郎の顔を見るなり近寄ってきた大人達の言動で分かった。


「父上殿は息災かな?」

「はい、おかげさまで」


頭が剥げかけた肥満気味の男は、関西訛りの話し方をしている。
羽織の家紋は見たことが無かったが、光太郎への話ぶりからしておそらく伯爵以上の称号を持つ者だろう。








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