【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
木兎家は喪中のため、本来ならば牛島家の新年会を欠席するべきなのだろう。
しかし光太郎は、赤葦から招待状を見せられるなり二つ返事で受けると言った。
「父上と懇意にしてくださっていた牛島侯爵からのご招待だ、断るわけにはいかない」
八重も同席している夕食で、白飯を頬張りながらニコリと笑う。
「もちろん八重も出席すると返事しておいて」
「・・・かしこまりました」
いつも通り命令に従う赤葦だったが、あまりにあっさりと承諾した光太郎に少なからず驚きを覚えていた。
「でもよろしいのですか? 光臣様の所へ新年のご挨拶に伺わなくても・・・」
「父上か?」
そういえば、八重はまだ一度も光臣に直接会ったことがない。
ようやく伯父の顔を見ることができるかと、口を挟まないまでも淡い期待を抱く。
しかし、光太郎は少し考えてから首を横に振った。
「いや、やめておく。一応、世間的には“不治の病で隠居した”ということになっているし」
きっと光臣にとっては正月も隠居先で静かに過ごしたいだろう。
日美子の死を過去のものにできないうちは、“息子”の光太郎の顔や、姪の八重の顔ですら、光臣につらい記憶を思い起こさせるだけなのだから。
「・・・旦那様がそう仰るなら、牛島家へのご挨拶だけにしておきましょう。先代には折を見て私からご様子伺いの文を送っておきます」
「うん。八重もごめんな、父上への挨拶はもっと暖かくなってからにしよう」
「気になさらないでください、同じ日本なのだからいつでもご挨拶にいけます」
「そうだな!」
英国と日本は離れすぎていて貴光は光臣に再び会うことなく死んでしまったが、今は何十日もかけて海を渡らなくても会うことができる。
焦らずともいつか光臣に会えるだろうと、八重はニコリと笑って牛島家の新年会に出席することを承諾した。