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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞





「おい、牛島さんと木兎さんが手合わせをするぞ!!」

誰かの声に真っ先に反応したのは赤葦。
零コンマ数秒遅れて白布も道場の中央に目を向ける。

組み合わせでたまたまそうなったのか、それとも示し合わせていたのか。
試合場の片側では若利が澤村に、もう片側では光太郎が黒尾に、それぞれ面紐を結んでもらっている。

「おー、二人ともやる気満々だね」

のん気な声を出しているのは天童だけだ。
道場に居る者は全員、固唾を飲みながらこれから始まる試合稽古を今か今かと待っていた。

武具を付けていると、若利と光太郎にさほどの体格差はない。
だが、悠然と立つ若利には何か圧倒的な力のようなものを感じた。

それは素人の八重よりも赤葦の方がよく分かっているのだろう。


「先ほど、旦那様と対峙すると自分が世界の主役になれたような高揚感を覚えると言いましたが・・・」


静かな瞳に現れる、畏怖。


「若利様と対峙すると思うのは、自分がいかに“小さき存在”であるかということ」


それだけ若利は圧倒的すぎる。


「どんな手を使おうとも、若利様は単純にそれ以上の力で捻じ伏せてきます」


光太郎と若利は共に実力者でありながら、対照的だった。


周囲の声援を巻き込みながら、自分のみならず相手の力まで引き出す光太郎。
恵まれた体格と練り上げられた技術で、相手に敗北以外の道を与えない若利。

この二人の手合わせは、門下生ですら滅多に見る事が出来なかった。

なぜなら、この二人の場合は打ち合いだけにとどまらず、激しい組み討ちにまで発展しまうからだ。


“最後の稽古は実戦形式でやるんだ。俺がウシワカや黒尾から華麗に一本取るのを見に来てよ”


しかし、今日の光太郎は若利から一本取る気でいる。
これまでの手合わせで負け越しているというのもあるが、何より八重の前でどうしても若利を負かさなければならなかった。








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