【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
「白布さん、僕を巻き込まないでください。僕はただ、病弱な菅原さんの代わりに来ただけなんで」
赤葦と会話をするのはいいが、天童と会話をするのは御免ということか。
どうやら天童はここでも嫌われているらしい。
「こらこら、月島。こんなに顔が揃うのは滅多にないことなんだから、そんなこと言わないの」
澤村がやんわりと宥めると、月島は口ごたえこそしないものの頬を膨らませてそっぽを向く。
冬なのに汗臭い場所など来たくもなかったが、大地の親友で月島の先輩でもある菅原が高熱を出してしまったから仕方がない。
病床の菅原に“俺の代わりに大地の勇姿を見てきてくれよ”と言われたら、来ないわけにはいかないだろう。
「僕は赤葦さんと一緒にいます」
ススス・・・と寄ってくるあたり、月島はかなり赤葦に懐いているようだ。
赤葦もまんざらではないようで、微笑みながら月島の背中をポンポンと叩いている。
「・・・・・・・・・」
なんだか今日は赤葦の知らない一面をたくさん見れているような気がする。
今も会話の合間にしているように、甲斐甲斐しく光太郎の世話を焼くのはよくある光景だが、ムキになって口喧嘩をしたり、年下の人間を可愛がる赤葦は見たことがなかった。
そうか・・・
この若さで木兎家の家令になっていなければ、赤葦は今もこうやって同年代の友人達と交流できていたのか。
「八重ちゃん、やっぱり嬉しそうだね」
「天童さん」
「だけど寂しそう」
天童の前ではいくら自分を偽ろうとしても無駄なのかもしれない。
彼の細い瞳孔は全てを見通してしまうのだろう。
「───はい・・・嬉しくて、少し寂しいです」
赤葦だってまだ十七歳なんだ。
光太郎たちと一緒に防具を付け、剣道の稽古をしていたっておかしくない。