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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞




しかし、天童にとってはそんな白布の剣幕などお構いなし。
身体を180度回転させると、防具を付けていた若利に向かってヒラヒラと手を振りながら声をかける。

「ねーねー、若利君! 俺が誰を応援しようと別に構わないよね?」
「・・・?」
「若利君は、俺の応援なんか無くたって強いんだから」
「よく分からないが、お前の好きにすればいい」

誰を応援するかは天童の自由だろう、と若利はまったく意に介していないようだ。
しかし、周囲に無頓着なところがある若利だからこそ、積極的に応援してあげなければならないと白布は考えていた。

「それでも牛島家の書生ですか!? 同じ書生なら、少しは月島を見習ってください」

ビシッと指をさした先では、澤村の防具を付ける手伝いをしていた長身痩躯の男が“げっ”と嫌な顔をしている。
彼とは会ったことがないが、黒ぶち眼鏡で半分隠れている顔立ちは相当の美形だ。

「眼鏡君を見習う? ムリムリ~」
「眼鏡君って呼ぶのやめてもらえませんか」

大袈裟に首を振っている天童に茶化されていると思ったのか、彼は心底迷惑そうに顔をしかめた。
だが丁度そこへ、光太郎に甲手を付けてあげるために離れていた赤葦が戻ってくると、今度はふわりと顔を綻ばせる。

「やあ、月島も来てたのか。久しぶりだね」
「御無沙汰してます、赤葦さん」

どうやら赤葦も彼を可愛がっているらしく、天童の時とは打って変わった柔らかい態度を見せていた。

「八重様は月島蛍と会うのが初めてですよね。澤村家の書生で、私達の一つ年下です」

赤葦の紹介を受けると、月島は八重に向かって丁寧に頭を下げた。
その仕草を見れば、相当の教養がある男だと分かる。

細身だからそれほど感じないが、驚くべきことに身長は光太郎よりも高く、日本人にしては珍しいほどの明るい色の髪。
かなり優秀そうである一方、気難しそうでもある。

そしてどことなく、“赤葦と気が合いそうな人”だという印象を八重に与えていた。







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