【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
木兎貴光の娘、八重。
赤葦が過剰に彼女を守ろうとするのは、ただこの男が赤葦家の“長男”だから・・・だろうか?
「───面白いねぇ・・・ほんと」
天童が含みのある笑いを浮かべていると、“邪魔だ”と言わんばかりに後ろから白布がグイッと腕を引っ張る。
「どいてください、天童さん」
「いたたたた、そんなに強い力で引っ張らなくてもいいだろ」
泣き真似をして見せるわりには、まったく悪びれた様子がない。
若利と親しい仲でなければ、すぐにでも追い出していたのに・・・と白布は眉間に青筋を立てかけたが、今はそれどころではない。
「自己紹介が遅れました、私は白布賢二郎と申します。八重殿のお噂はかねがね」
そう言って八重に丁寧に頭を下げる。
背筋を伸ばし、少し神経質なまでに周囲を気にするその立ち振る舞いは、やはりどことなく赤葦に似ていた。
そしてその理由は直後の天童の一言で明らかになる。
「賢二郎の親父さんは牛島家の家令なんだ。若利君が家督を継いだ暁には、賢二郎も親父さんの役職を引き継ぐだろうね」
木兎家と赤葦家。
牛島家と白布家。
赤葦も白布も、名家を支えるという役目を持ってこの世に生まれた。
「それにもともとこの二人は、赤葦が学習院を辞めるまで同級生だったんだよ」
それで合点がいった。
先ほどから白布も赤葦もお互いに遠慮をする素振りを見せない。
仲が悪い・・・というより、遠慮の要らない仲と言った方が合っているだろう。