【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
「おやおや、珍しい人がいるねぇ」
若利達に少し遅れて入ってきた、数人の男。
その先頭にいたのは、枯葉色の着物姿の天童だった。
「研磨君じゃん、久しぶりぃ」
彼が茶化すような口調で研磨に話しかけると、憐れな子猫は小さく“ひっ”と悲鳴を上げて黒尾の後ろに隠れてしまう。
その様子を見て“相変わらずだね”とクスクスと笑っているあたり、天童は確信犯なのだろう。
八重は牛島邸で初めて会った時の彼との会話をふと思い出した。
“俺さぁ、ずっと不思議だったんだよね”
“どうして駒鳥を殺した雀を、誰も咎めないんだろう?”
───牛島家の書生、天童覚。
「・・・お久しぶりです、天童さん」
八重が声をかけると、天童は上半身だけクイッと横に倒し、遠くの景色を見るように手を額にかざしながら顔を覗き込んできた。
「八重ちゃん! めーずらしい」
今初めて気が付いたような顔をしているが、そんなわけはないだろう。
態度も言葉もいちいち大袈裟で、わざとらしい。
研磨も天童が心底苦手なのか、逃げるように壁際まで後ずさっていた。
「研磨君は相変わらずだねェ。お互いに“他人を読む”者同士、仲良くしよーよ」
「・・・エンリョしとく」
研磨が天童を嫌う原因こそ、自分とは異質の“他人を読む”能力なのだが、天童はそれを知りつつ面白がって彼にちょっかいをかける。
故に、黒尾がいなければ研磨は天童の現れそうな場所に決して近づくことはない。