【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第3章 秋霖 ②
「も、申し訳ございません。身内を庇うような発言をしたこと、どうかお許しください」
「どうして謝るの? 京香さんは赤葦の事を教えてくれただけでしょう」
英国では使用人が主に対して自由な口をきくことは許されなかった。
それはこの家でも同じなのだろう。
しかし、日本には心置きなく話せる人間が一人もいない八重にとって、京香とはそういった隔たりを作りたくなかった。
「木兎家の人間といっても、私はまだ名ばかり。これからも色々な事を教えてね、京香さん」
「・・・ッ!」
安心させるつもりでそう言った八重だったが、京香は反対に強い衝撃を受けたような顔を見せていた。
「八重様・・・」
───心のどこかで願っていた。
どうか“木兎本家の血筋”が性根の悪い令嬢であって欲しい、と。
でも・・・
でも、この御方は・・・
「八重様、恐れながら一つだけ質問をすることをお許し頂けますでしょうか」
「もちろん」
京香は震える手を袖の中に隠し、八重から少し視線を外しながら口を開いた。
「・・・八重様は・・・御父上様と御母上様のどちらに似ていらっしゃるのでしょうか?」
八重の父、貴光は留学してから再び木兎家の敷居をまたぐことなく帰らぬ人となった。
母も貴光と結婚後、木兎家の人間として日本で公けの場に出ることは一度もなかった。
だから京香が二人のことを知らないのも無理はない。