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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞




態度も話し方も無気力極まりないのに、どこか妖艶さを漂わせる弧爪研磨。
生みの母は京都の五花街の一つ、上七軒で太夫にまで上り詰めた遊女だけに、華奢で人見知りな性格でありながら、人物像を完璧に掌握する鋭い観察眼を持っている。

「弧爪は相変わらずだな」

赤葦は黒尾の後ろに隠れている弧爪を見て、小さく溜息を吐いた。

母は彼を産み落とした後、実父とは別の男に身請けされたため、紆余曲折を経て弧爪は豪商である黒尾の父に引き取られた。
兄弟同然に育ってきたのだから、少しは黒尾に似てもいいものだと思うが、そうもいかないらしい。

「クロには悪いけど、俺はそろそろ帰る・・・もうすぐあの人達が来るでしょ」
「ああ、おそらくな」
「赤葦だけならいいけど、あの人のことはニガテだから」

弧爪は黒尾の袖元で、さも面倒臭そうに顔をしかめていた。

木兎もそうとう厄介な相手だが、黒尾の知り合いの中にはその他にも彼にとって鬱陶しい者がいる。
前に黒尾の稽古の応援に来た時、たまたま居合わせたその男のせいで自分まで剣道をさせられたのを根に持っていた。

「おいおい研磨、そんなことを言わずにお前も見ていけって」
「ヤダ。先に帰る」
「といっても、お前一人であの女の子の集団を突っ切れるのか?」
「・・・・・・・・・」

それもムリ・・・と弧爪が盛大に嫌な顔をしたその時だった。


「キャー!!! 若様!!!」


先ほど光太郎が浴びせられていた“黄色い声”より何倍も高音の、もはや悲鳴といってもいい声が道場を揺らす。
そのあまりの大きな嬌声に八重もビクリとしながら振り返ると、入り口で丁寧に頭を下げている二人の男が目に入った。







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