【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
「光太郎さんと私が急いて結婚したところで、木兎家を見る世間の目は変わりません」
夜会や花会に参加して分かったことが一つある。
木兎光臣という人物が当主としていかに優秀で、憧れや羨望の眼差しを受けていたか、ということだ。
対して、世間の光太郎への評価といえば、“伯爵の称号を与えるには未熟な子ども”、“光臣には似ても似つかない”といった辛辣なものばかり。
「まずは、光太郎さんが先代に負けないくらい素晴らしい当主であることを、世間に知っていただかなければ」
「うーん、そりゃそうだけど・・・つまり、八重は俺と結婚したくないってこと?」
「そう言っているわけではありません。結婚以外にも道はあるかもしれないし、結婚しか道はないかもしれない。それを見極める時間が欲しいのです」
「・・・・・・・・・」
木兎家の“名”を守ることができたら、“血”はどうにでもなる。
まずは家を守ること、それが大事だ。
「約束します。光太郎さんが名を守ってくだされば、私も必ず血を守ります」
───私達の次の世代を産み育てる。
「だから、今は学院のことに専念してください」
光太郎はしばらく黙っていた。
少なくとも納得しているような表情ではなかったが、八重の言ったことを理解はできたらしい。
「・・・それって“もっと勉強しろ”ってこと?」
確かに良い成績を取っているとは言えないけどさ・・・と頬を膨らませてみせる。
すると赤葦が冷ややかに頷き、後ろにいた女中に目配せをして空になっている光太郎のグラスに水を注がせた。
「そうですね、旦那様にはもう少し勉学にも目を向けていただきたいです。御卒業時にはせめて30番以内に入っていただかないと・・・光臣様は主席で卒業されていますが」
「30番?! そりゃ無理だろ。だって今は下から数えてもそれより早いくらいだし」
「無理ならば家庭教師をつけますか? 牛島家か澤村家に口利きしていただいても良いでしょう」
牛島家と澤村家にはそれぞれ優秀な書生がいるから丁度いいだろう。