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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞




思えば、父親に厳しく躾けられ、光臣に期待を寄せられ続けた少年時代だった。

友達にすることを許されたのは、将来は木兎家に有益な人間となるだろう子どものみ。
サーベルのおもちゃや紙鉄砲で遊びたい気持ちを抑え、裕福で教養のある友人と屋内で本ばかりを読んでいた。

そんな生い立ちを恨めしいと感じたことはない。
それが当然だと思っていたし、性に合っているとすら思っていた。


“木兎家のため”


一生懸命やったし、言われた事をやった。
褒められたいという気持ちより、怒られたくないという気持ちが強かった。

だから、初めて会った時は衝撃的だった。


“なあ、けいじだっけ? ちょっとだけセミ獲りに付き合ってくんない?”


真っ黒に日焼けして、身体中に擦り傷を作って、夏の太陽よりも明るい顔で笑っていた、光臣の嫡男。

将来は木兎家を背負って立つ人間が、こんなに自由でいいのかと驚いた。
同時に、もしこの世界の主役となる人間がいるならば、きっとこの人だろうと思った。

その思いは、はっきりとした主従関係となった今も変わってはいない。

光太郎はどのような時も赤葦の前を歩き、そして強い光で照らしてくれる。
自分の役目は、そんな光太郎の行く手がふさがらないよう、影ながら支えることだ。

そのために厳しく躾けられ、期待を寄せられてきたのだから。

どんなに息苦しくても───




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