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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞




「旦那様・・・今だけ・・・“光太郎さん”とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

「もちろん。つーか、いつもそう呼んで欲しいんだけど」

京香は目頭に溜まった涙を着物の袖で拭うと、寂しそうに微笑んでいる光太郎のもとへ歩み寄った。
そして、数歩の距離を保ちつつ、主の前で跪く。


「赤葦家の人間が木兎家から離れることは決してありません」

「・・・うん」

「私は光太郎さんの望むままに、死ぬまでお仕えいたします」


木兎家に家政婦長として仕えるためには、生涯独身でいなければならない。
結婚をしたら職を解かれるからだ。

嫁ぐことの無い身だから、どんなに汚れても構わない・・・
いいえ、貴方のためならば、私はどんな苦しみや辱めにも耐えられる。


「赤葦家に生まれ落ちたその日から、私は貴方のために生きているのです」


女としての幸せなどいらない。
貴方という存在があれば、それだけで生きいくことができる。

光太郎さん・・・貴方は・・・


「光太郎さんと八重様は、私と京治の光です」


だからどうかお傍にいさせてください。
この命が尽きるまで、狂った運命の歯車から貴方を守らせてください。


「うん、分かってる」


光太郎は切なそうに笑って、京香に触れることのない自分の両手を見つめた。


「だから、俺は八重と結婚して子どもを作るんだ」


そうすれば自分は京香と赤葦の“光”でいられる。
みんなを幸せにすることができる。

自分と八重が犠牲になれば───


「木兎家の未来は、俺と八重の二人で守る」


血の繋がりはないかもしれない。
しかし、不思議と周囲の者に安心感を与えるその“存在の大きさ”は、確かに光臣に通じるものがあった。


「本当に・・・ご立派になられましたね、光太郎さん」

「いつまでもガキ扱いするなよ、京香」


京香も家政婦長としてはまだ若輩だ。
年上の家政婦の中には京香を軽視している者もいるし、赤葦家というだけで優遇されていると陰口を叩く者もいる。

それでも京香ほどの覚悟を持ってこの家に仕えている女使用人はいないだろう。







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