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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第6章 冬霞






「赤葦がいてくれて本当に助かる」

赤葦が部屋から出ていった途端、光太郎は籐椅子に深く座り直して安堵したように呟いた。

いくら家令だろうと、独身の令嬢の寝室に入るなどあり得ないことだ。
闇路に知られたら怒られること必至だが、それでも赤葦が八重を傷つけることは絶対にないと確信があるから許した。

「おかげで俺も腹を括ることができたよ」

八重の気持ちは大事だ。
それでも宿命を変えてやることはできない。


「───俺は八重と結婚するよ」


光太郎は京香を真っ直ぐと見て、一音、一音、噛みしめるようにそう言った。


「そうすれば、赤葦も・・・闇路も・・・この家の者全員を守ることができるんだよな」

「旦那様・・・」

「そんなに心配そうな顔をするなよ、京香」

籐椅子に座る光太郎と、部屋の壁際に立つ京香。
二人の距離は3メートルほどか。
弱い明かりでは、京香の表情をはっきりと見て取ることができない。

それでも光太郎は、さっき八重にしたように京香をそばに呼ぶことはしなかった。


「どんな形でもいい・・・赤葦とお前がそばにいてくれれば、俺はきっと幸せなんだと思う」


赤葦家の人間がいれば、木兎家は安泰。
赤葦京香と京治の姉弟がそばにいてさえくれれば・・・


「なぁ、京香・・・」


光太郎は先ほどまで八重を抱いていた右手を、暗い天井にかざした。


「俺は八重のことは抱きしめるけど、お前には触らないよ」


天井の格子柄を見上げる光太郎とは対照的に、京香は板張りの床を見るように顔を伏せる。


「京香には絶対に・・・触らない。だからさ」


指一本、触れないと約束しよう。
触れてしまえば、どうなってしまうか分かっているから。

木兎家当主である以上、“今の”自分が京香に触れることは許されない。


「お前は誰よりも俺の近くで・・・そばにいて欲しい」


その瞬間、俯く京香の目から一粒の涙が床に零れ落ちた。






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