【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
「はっ・・・ッ・・・」
だんだんと手の動きが速まり、涙のような雫が先端から零れ始める。
朦朧とした意識の中で思うのは、自分が生まれた意味。
「この身体は・・・爪の先から髪の毛一本・・・精液の一滴まで・・・」
全て、木兎家のもの。
“京治、お前は赤葦家の人間だ。木兎家のためだけに生き、全てを捧げろ”
全て、光太郎と八重のもの。
「くっ・・・・」
強い痺れが集中して腰が弓なりになった瞬間、濃密な精液が吐き出された。
その熱は赤葦の命の証であり、存在価値そのもの。
「はっ・・・はっ・・・」
“秘密の花園”で行う自慰が赤葦に背徳感を与えることはない。
彼に与えるものがあるとすれば、それは───
“光太郎さんのために道を作ること・・・それが俺の役目ですので”
赤葦がこの世に生を受けた意味の再認識だった。
「・・・・・・・・・・・・」
静けさが戻った部屋。
先ほど手に取った本はいつの間にか床に落ちていた。
その時にページがめくれてしまったのだろう。
中から一枚の写真が半分だけ外に飛び出している。
「───日美子様・・・」
赤葦は力なくその写真に写っている人の名を呟いた。
「俺に許しを請うのは間違っている」
貴方の最期の涙はとても美しかった。
「俺が赤葦京治である限り、貴方を許すことは決してないのだから」
悲痛が混じる赤葦の声。
それでもセピア色の日美子は、幸せそうな笑顔を赤葦に向けていた。