【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
虚空を見つめるうちに、赤葦は身体の底から恐怖の欠片が込み上げてくるのを感じた。
ああ・・・
これは、闇の中に引きずり込まれていく感覚だ。
今ここに自分を抱きしめてくれる京香はいない。
踏みとどまるためにはあれをするしかない、か・・・
「・・・・・・・・・・・・」
埃が舞う中、赤葦は右手の平をゆっくりと口にあてがった。
唾液を溜めた舌で舐めながら、左手でサスペンダーを外し、ズボンを下ろす。
「・・・ッ」
褌の上からなぞるように指を這わせているうちに、だんだんとそこが膨らみと固さを増していく。
───いつからだろう。
この暗く澱んだ部屋で、背徳的な行為をするようになったのは。
否、ここで行う自慰が赤葦に背徳感を与えることはない。
「ん・・・」
触らなくても形が分かるほどになると、腰に巻き付けていた横褌をずらして解放してやる。
引力に反するようにして顔を出した性器に、赤葦の眉間にシワが寄った。
性の快感を知っている者なら、自分の身体に触れて陶酔することに罪悪感を覚えるだろう。
しかし、赤葦にとってこれは倒錯した欲望とはかけ離れたものだった。
「・・・ッ・・・」
濡れた手の中にある男根は熱く、脈打っている。
無論、自涜による刺激は脊髄をかけあがり、快感として脳に伝達されている。
次第に呼吸が荒くなり、時折り甘い声が漏れることもあった。
しかし、赤葦の瞳には一切の興奮の色がなかった。