【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
話には聞いていた木兎光太郎。
初めて彼を見た時、秋の長雨の暗鬱を晴らすような人だと思った。
“八重!!! よく来たな!!!”
嬉しそうに両手を広げながら出迎えてくれたその人の容姿を見て、最初に感じたこと。
色素の薄い目。
派手な顔立ち。
目を引くほどの長身。
それらの印象を一言にまとめるとしたら───
「日本人にしては珍しい容姿だ、と思ったわ・・・まるで西洋人のような・・・」
すると赤葦は静かに頷き、チラチラと揺れるランプの明かりを見つめた。
「その通り・・・日美子様の母上は英国人でした」
英国人と日本人の混血。
そのような娘が、由緒正しい家へ嫁入りできるわけがない。
「私も詳しくは存じませんが、日美子様を産んだ後すぐに母上は英国に戻られたとか・・・そのため、日美子様は嫡子と同じように本邸で育てられたとのことです」
八重も英国で白人と黒人の混血児を見たことがある。
恐らく、貴族が使用人との不義で作った子なのだろう、とても惨めな扱いを受けていた
小さな島国の日本なら余計に、西洋人との混血の子が嫌厭されてもおかしくない。
だが、人と非なる者こそ美しく成長するのは、まさに皮肉と言えよう。
十三歳になる頃には白薔薇に例えられるほどの美しさとなっていた日美子。
光臣は積年の恋心を紛らわすかのように、一時は芸妓や華族の娘たちと浮名を流していた。
それでもやはり諦めきれず、ついには父に嘆願して日美子の姉との婚約を無かったことにした。
「日美子様はその事に酷く心を痛めたそうです。姉君も許嫁が解消となってから心を病み、しばらくして亡くなられました」
記録上は病死となっているが、本当は自害だったかもしれないと赤葦は考えている。
───この時、運命の歯車の一つが狂ってしまった。