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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合





黒尾が一人、いなくなっただけでシンと静まり返る廊下。

別に彼が騒がしかったというわけではない。
赤葦が漂わせる陰惨とした空気のせいで、緞帳のごとく重い静けさがのしかかっているだけだ。

「八重様・・・貴方にはご自覚というものが無いのですか?」

「・・・?」

「いくら旦那様のご友人とはいえ、こんな夜更けに使用人もつけず男性と会話をするなんて・・・間違いが起こったらどうするおつもりだったんですか」

黒尾と鉢合わせたのは偶然だ。
辺りに使用人がいなかったのも同様。
それでも未婚の婦人が取るべき行動でなかったことは、八重自身も反省していた。

「ごめんなさい、赤葦」

主従関係が逆転したかのような状況に、赤葦は小さく溜息をついた。

「・・・黒尾さんから聞いたと思いますが、木兎家は光太郎様が八重様を妻として迎えられることを望んでいます」


黒尾が八重に明かしたことについて、赤葦は誤魔化す気も、隠す気もないようだった。
しかし、それが“木兎家の意志”であるかのような言い方に違和感を覚える。

この縁談は光太郎自身が望んだものではない・・・ということなのだろうか。


「分からないわ・・・なら、どうして私をわざわざ“貴光の娘”として本家に住まわせる必要があったの?」

「貴光様が亡くなられた後、八重様は平民である母方の御実家に引き取られました。しかしそれでは、伯爵の妻としてお迎えするには身分が低すぎるため、華族になっていただく必要がありました」

傀儡のように淡々とした口調。
この男の感情はいったいどこにあるのだろうか。

先ほど黒尾に見せた、怒りを露わにしている赤葦の方がよっぽど人間味があった。









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