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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合




自分は光太郎と結婚するために呼ばれた───
そう思うと合点のいくことがある。


“八重様には旦那様の作法とやらの前に、まずは茶道、華道、書道を習っていただきます”

八重の恥は木兎家の恥。

そう言い放った赤葦は、八重にあらゆる作法を短期間で習得させようとしている。
それはおそらく花嫁修業ということなのかもしれない。

「でも分からない・・・私でなければならない理由は何? 光太郎さんの妻になりたい華族の御令嬢などいくらでもいるはず」

身分、教養、容姿。
そんなもの、八重より優れた女性は星の数ほどいるだろう。
それなのに何故、光太郎は八重を選んだ?

“お前は一生懸命、“木兎家の人間”になろうとしてくれている。それが俺にはとても嬉しいんだよ”

いや・・・
八重を光太郎の妻に選んだのは、別の人間の可能性も───

その瞬間、耳の奥へ流れ込むように冷たい声が蘇った。


“私は“梟”です。夜に鳴けば、誰かが闇に引きずり込まれる”


なぜ今、赤葦の言葉を思い出した?

家令が主の伴侶を選ぶことなどあるのだろうか。
たとえあったとしても、イトコ同士の関係にある光太郎と八重が結婚して、木兎家になんの得があるのだろう。


「黒尾さんはご存知なのですか? 木兎家が何故、私を選んだのか」

すると黒尾は少し考え込んでから、青白い三白眼で八重を見据えた。

「ごめん、それには答えることができない。“梟”に殺されたくねェから」

「梟・・・? 赤葦のことですか?」

「ははは、確かに赤葦も梟みてェだよな。でも、俺からしてみれば・・・」

闇の生態系の頂点に君臨する梟。
金色に光るあの目に捉えられたら最後、絶望だけが待ち受ける。


「木兎の方がよっぽど───“梟”、そのものだ」


その意味深な笑みが暗示するのはいったい何だろうか。
八重が首を傾げたその時だった。







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