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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合




「あの・・・仰っている意味が分からないのですが」

「え? まさか、まだ木兎から何にも聞いてねェの?」

反対に驚いた顔をしているのは演技だろうか。
だとしたら本当に食えない男だ。

そういえば・・・夜会でこんなことを言っていたか。


“木兎の血が与えた使命を君はどう受け止めるのか───見てみたいと思った”


「あの・・・この間、私の使命がどうとか仰っていましたけれど、そのことと関係があるのでしょうか」

すると、黒尾はガシガシと右手で後頭部を掻き、小さく溜息を吐いた。

「うーん。あいつは妙なところで弱気だから、このままじゃいつまで経っても言わねェんだろうな・・・」

「・・・?」

「だが、ウシワカに横取りされるよりは、俺が節介を焼いた方がマシ・・・か?」

そうやって数十秒ほど悩んでいたが、黒尾は腹を決めたらしい。
脱力気味にしていた背骨を真っ直ぐと伸ばすと、高い位置から八重を見下ろし口の端を上げる。


「八重ちゃん、自分が木兎家に引き取られた本当の理由を知っているか?」

「両親が亡くなった私を不憫に思ったからでは・・・?」

「残念ながらそれは違う。木兎があんたにどう言っているかは知らないが───」


黒尾の口から出た次の言葉を聞いた瞬間、八重は驚きのあまり呼吸すら失った。


「木兎光太郎の妻となるために、君はこの屋敷に呼ばれた」


木兎家の新たな“光”。
八重が生け贄となってその身を捧げれば、闇に堕ちたこの家を救うことができる。


「それが木兎の血が君に与えた使命なんだよ」


黒尾の言葉はもはや、八重の耳にはほとんど届いていなかった。

動揺・・・?
いや、それはちょっと違う。

漠然とだが、心のどこかで分かっていた・・・

最初の日・・・新橋の駅からこの家に向かう馬車の中で、木兎家が何故自分を引き取る気になったのだろうかと疑問に思っていた、あの時から・・・

木兎家がただの“同情心”や“厚意”から自分を引き取ったわけではないだろうことは分かっていた───








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