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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合




美丈夫。
彼を一言で形容するならば、その言葉だろう。

「若利、こちらが話していた木兎八重さんよ」

六尺は優に超えるだろう長身。
光太郎や赤葦も西洋人に引けを取らない体格をしているが、牛島若利は板金鎧のような筋肉が着物の上からでも分かるほど屈強な男だった。

太く吊り上がった眉は凛々しく、意志の強そうな一重瞼がさらに彼を精悍な印象にしている。

「初めまして、牛島若利です」

そう言って差し出してきた右手は、剣道をしているせいか手の平が厚く、ところどころマメができている。
そういえば、武道に優れた光太郎さえも対抗意識を持つほどの使い手だと言っていたか。

「八重と申します」
「お前のことは木兎からも聞いている」

お世辞にも愛想が良いとは言えないが、赤葦のように冷徹というわけでもない。
酷く真面目で厳しい性格ゆえ、傲岸不遜に見えているだけだろう。

握手をする手だって八重を気遣ってか、かなり力を加減しているようだし、八重の生けた花を見て“よく出来ている”と褒める程度の社交性も持ち合わせているようだ。


「若利、八重さんに庭を案内して差し上げたら?」
「承知しました、母上」

素直に母親に従う若利は、さぞ自慢の息子なのだろう。

“若利様は本当にいつ見ても麗しい”
“御覧なさいな。若い御二人が並ぶと、菊合の花も霞むよう”

花会に集まった婦人達が口々に感嘆するのを見て、牛島夫人は満足げに口元に笑みを浮かべた。


一年の最後に咲く花、菊───

高貴や高尚という意味を持つその花に思い起こされるのは、在りし日の木兎家次男。


「───貴光様・・・」


若い頃は叶わなかった恋が今、違った形で実を結ぼうとしている。
自分の血を分けた愛息子と、彼の血を受けた木兎家令嬢が結ばれれば・・・

“木兎貴光様の御息女が帰国なされました”

それは赤葦が知らせを持ってきたあの日、定子の心に生まれた本懐となっていた。










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