【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第5章 菊合
光太郎さん・・・
どうか、そんな顔をなさらないでください。
貴方には光だけを見ていて欲しい。
「・・・光太郎さん、京香を呼んできましょうか?」
「え?」
「今・・・貴方のおそばにいるべきなのは、俺よりも姉さんの方ではないでしょうか」
すると光太郎は自分が赤葦を追い詰めていることに気づき、日美子に似た笑みを浮かべた。
「あはは、別に赤葦でいいよ」
「・・・“赤葦で”って言い方は、何か引っかかりますね」
「いや、そういう意味じゃねーよ」
京香にはなるべく八重のそばについていてやって欲しい。
この家で誰よりも八重のことを考えているのは京香なのだから。
「それにさ・・・」
背中を丸め、エンジ色の絨毯が敷き詰められた床を見つめる。
「───俺は・・・赤葦か京香のどちらかがそばにいてくれたら、それでいい」
自分の使命は、木兎家を守ること。
しかし、狂ってしまった運命の歯車は、光太郎からその道を奪おうとしている。
「だから、“赤葦で”いいんだ。そばにいてよ」
“過去の木兎家と、未来の木兎家を守るのは、光太郎さんと私の役目です”
「・・・何度言わせれば気が済むんですか」
貴方が望むまでもない。
俺が生まれたのは・・・
いや、狂った運命が赤葦京香と赤葦京治という姉弟を作ったのは・・・
「それが俺達の役目ですから」
赤葦家の人間は、決して貴方を一人にはしません。
そのせいでいつか、八重様だけでなく“貴方”の涙を見ることになろうとも───