【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第5章 菊合
「光太郎さん、お話があります」
その日の夜も光太郎が帰宅したのは7時過ぎ。
年明けに剣道大会があるせいか、近頃は稽古にいっそう力を入れている。
八重はそんな光太郎が夕食を終えるのを待ってから、書斎に来てもらうよう誘った。
「どうした、八重?」
赤葦と京香もそろったところで、光太郎はもたれかかるような恰好で机の天板に腰かける。
「牛島夫人の菊合についてです」
「ああ、それか。もう赤葦が手紙を書いてくれたと思ってたけど」
光太郎はすぐ隣にいた赤葦に、“そうだよな?”と視線を向ける、
しかし、参加することは自分から話すと彼には言ってあるため、赤葦はただシレッと目を逸らしただけだった。
「違うんです、光太郎さん」
「え、まだ何かあるの?」
「はい、あの・・・やはり牛島夫人の招待をお受けしたいと思って」
その瞬間、光太郎の表情が変わった。
口元からは微笑みが消え、目を大きく開く。
「菊合に参加するってこと?」
「はい。あれだけ光太郎さんに心配していただき、赤葦にもお断りの手紙を書いてもらっておきながら、今になってこんなことを言い出すのは申し訳ないと思っているのですが・・・」
「ふーん・・・」
木兎はすぐには何も答えず、八重の顔を見ていた。
その表情に怒りや疑いなどは無いが、なんとなく気まずい空気が流れる。
「あのさ、何でお前の気が変わったか、聞いてもいい?」
「色々考えて・・・やはり、牛島家とは良い関係を築いておくべきだと思いました」
「・・・ふーん。でも、それはお前が気にすることじゃねーけど・・・」
あまり嬉しそうでないのは気のせいか。
いや・・・そうだとしても仕方がないだろう。
“家族会議”までして決めたことを、すぐに覆そうというのだから呆れているのかもしれない。