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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第5章 菊合




太陽の光が差し込んでいるはずなのに、暗く重苦しい部屋。
八重は全ての光を遮るように自分を本棚まで追い込んでいる赤葦を見上げた。

「・・・・・・・・・・・・」

梟のごとく暗闇で光る赤葦の瞳を前に声が出てこない。
その代わりに、生け花を教えてもらった時の牛島夫人の言葉が脳裏をよぎった。


“貴方が気負う必要はないわ、木兎家には赤葦がいるもの。彼は若いけれど使用人としてとても優秀よ”


家格が下の木兎家、ましてやその使用人でしかない赤葦を、牛島夫人は高く買っているようだった。
もしかして彼女とも関係を持ったのだろうか。

───木兎家の・・・ために・・・?


「八重様、何か仰ってください」


押し黙る八重に、赤葦は眉根を寄せた。

さすがに喋り過ぎたかもしれない。
日美子にかけられた不義の疑いに対してあれだけ腹を立てていた八重だ。

やはり軽蔑か嫌悪感を───


「思い出していました」


静かな八重の声に、赤葦の後頭部がピクリと動いた。


「幼い頃、お父様に叱られたことを」


突然、何を言い出すのかと赤葦は首を傾げた。
しかし八重は微動だにせず、真っ直ぐと家令を見上げる。

その目には恐怖も軽蔑も嫌悪も無かった。


「約束をしていたんです。馬の乗り方を教えてくれると・・・」


使用人は何があっても主人に仕えるのが当然だと思っていた、あの頃。













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