第6章 人間の醜いところ
その近い翡翠の瞳から目がそらせずにいると、総司さんは急に笑い出した。
「なぁんてね。本気にした?」
「…もう‼冗談だったんですか!?」
「まぁ、夏蓮ちゃんが本当に僕のことをそう見てくれたときは、ちゃんと考えてあげるよ。」
にこにこと余裕な笑顔を見せる総司さん。
場を、和ませてくれようとしたんだろうな。
たしかに、男の人は兄さましか知らない。
男の人とお付き合いすることなんてなかったし、そういう関係になることもなかった。
それどころか、出会いなんてなくて、家の近くの関わる男の人なんておじさまかおじいさまくらいしかいなかった。
この新選組にきて、たくさんの男の人に囲まれて、ちょっと、欲張りになっていたのかもしれない。
総司さんの言う通り、誰か、想う人ができたなら、兄さまから少しは離れられるのだろうか…。
総司さんは、いつも優しい。
きっと、あの夜のちょっぴり怖い瞳は嘘なんだと信じたい。
「総司、さん。ありが、とう…ございました。」
その感謝を一言告げて、私は視界が途切れた。