第6章 人間の醜いところ
「泣いてもいいよ。」
総司さんが立ち止まり、そう一言告げたのは、広間を出て廊下を歩き、角を曲がったところだった。
「何をおっしゃるのですか?」
私は唇をかみしめて、ただ下を向いていた。
「はいはい。強がらないの。」
やれやれ、と小さなため息をついた総司さんは手を引いたまま、また歩き始めた。
私は、手をひかれるままに、ただ歩いていただけ。
行先は、総司さんの部屋で、その行先につく頃には、頬に何筋もの涙の跡ができていた。
総司さんは部屋に入るなり座って、私を隣に座らせてくれた。
「私は、とても、醜いですね。」
「みなさんの笑顔の中に、私がずっと居たいです。」
「女の子とも、仲良くしたいのに、それなのに、みなさんより先に出会ったのは私だから、だから…あの子よりもみなさんのことを知っていたい。」
「ずっと私を、妹として大切に想ってくれている兄様が、他の誰かのところに行ってしまうことが怖いです。」
たくさんの葛藤。
とても醜い人間の部分が、私を蝕んでいた。
こんなときに、思う。
私って、まだ子どもなんだな、と。
総司さんはそんな醜い一言一言を、ただ黙って聞いてくれていた。
そして、ふっと笑みを浮かべて頭をなでてくれた。
「なら、君が特定の想い人を作ってしまえばいいんじゃない?今は、土方さんしか男をしらないからそう思うんじゃないかな。僕が、その特定の男(ヒト)になってもいいけど?」
言葉を言い終わると、総司さんに顎を指で持ち上げられ、妖艶な笑みを浮かべた総司さんが視界いっぱいに入ってきていた。