第5章 嫉妬…?
誰かが気づくきっかけになるのはいいことなのではないだろうか…。
そう感じた私は小さな声で言った。
「あの…、千鶴さんの父は、蘭方医とおっしゃいましたよね……?」
「夏蓮くん?」
不思議そうに私を見る近藤さん。
察してくれそうな山南さんに目線を移すと、考え込むような仕草をしたのち、いつものような静かな声で告げてくれた。
「あぁ……。もしかして、雪村綱道氏ですか?」
「父をご存知なんですか!!」
やはり、そうだ………。
なぜ、こんなときに彼女が……?
「お前、どこまで知っている?」
「どこまでって…?」
「とぼけるな!綱道氏のことだ!」
空気がピリピリしている。
雪村綱道…。
彼がきっかけで新撰組ができた。
薬を持ち込み、それを飲むと人としての理性を失ってしまう。
私が聞かされたのはここまで。
だから、気を付けろと注意をされたんだ…。
そんな綱道さんは…
ひと月ほど前に綱道さんが詰めていた綱道さんの屋敷が家事で焼け落ちて以来、行方がわからなくなってしまった。
遺体はなかったけど、事件には巻き込まれたと私たちは思っていた。