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恋桜

第4章 浅葱色



「夏蓮、どうした?寒くねぇか?」

「平助さん…いえ、なんでも…。」

「そっか!」

廊下に立ち尽くす私の後ろから声をかけてきたのは平助さんだった。
おそらく、夜の巡察から帰ってきたのだと思う。
羽織は綺麗な浅葱色のままだった。

あっ…そういえば…
初日の夜からは、兄さまが共に寝てくれていた。
兄さまがいないときは一さんか総司さんが眠るまで側にいて頭を撫でてくれていた。
三人のうち誰かは必ず屯所にいるから、他の人に頼んだことはなかった。

でも、今日は三人ともいない。

「へ…すけさん!」

「んー?」

「折り入ってお願いがあります…。」

立ち去ろうとする平助さんに声をかける。
巡察から帰ってきてすぐで申し訳ないとは思うけれど、
怖いものには勝てはしない。

事情を話すと、声をあげて笑いながらも了承してくれた。

私は、部屋で平助さんを待つ。
羽織を脱いでくるから待っていてくれとのことだった。

「夏蓮。入るぞー。」

声と襖が開くのは同時だったと思う。
特に気にはしないけれど、
…私がお着替え中だったらどうしたのだろうか………。

「すみません、お願いします…。」

「いいぜ。にしても、一人と暗いところが苦手なんてなー。ほんと、女の子だよなぁー!」

「そんなことは!…否定はできないですけど…。」

布団に入ると、頭を優しく、それでいてぎこちなく撫でながら、話をしてくれる平助さん。

一さんは、無言で、ただただ撫で続けてくれる。
総司さんは、からかいながら撫でてくれる。たまに、添い寝もしてくれる。たぶん、からかってるんだろうけど…
兄さまは、きっと慣れてる。
小さい頃は、怖いとか関係なく寝かしつけるために頭を撫でてくれていたから。

みんなの優しさと暖かさに、私はすぐに眠くなる。

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