第1章 【ビターチョコ】菊丸英二/夢主
いや、無理だから!
無理って言ったら、絶対、無理だから!!
私が菊丸くんにチョコをあげるなんて派手なこと、出来るはずないじゃない・・・
よけいなことで、目立つことは、もう、したくない・・・
バタンと雑誌を閉じると、慌ててそれを本棚へと戻した。
それからは何事もなく数日が過ぎて・・・
周りはすっかりバレンタイン一色だったけど、私だけはそんなこと関係なく過ごして・・・
「失礼します、一年学級委員長です。報告書、提出しにまいりました。」
生徒会室に書類を提出しに来て、ドキン!と胸が高鳴る。
なんで生徒会室に菊丸くんがいるの・・・?
生徒会室の長机の上、そこには生徒会執行部ではない菊丸くんが膝を立てて座っていて、思わずじっと見てしまいそうになって、ハッとして慌てて視線を逸らす。
「ああ、ありがとう、待ってたの。」
「遅くなってしまい申し訳ありません、なかなか全クラスの分が集まらなくて・・・」
受け取りに来てくれた執行部員さんに書類を渡しながら、その肩の向こうの菊丸くんをこっそり盗み見すると、その近くで仕事をしている不二くんが目に入って、あ、そうか、テニス繋がりか・・・、そう納得する。
「それはそうと、小宮山さん、そろそろ本気で考えてくれない?、生徒会執行部に・・・」
「いえ、申し訳ありませんが、何度お誘い頂いても、そのつもりはありませんので・・・」
時々、勧誘される執行部・・・
何度頼まれても、これだけは引き受けるつもりはなくて・・・
いつもの文句で断りながらも、すぐそこに菊丸くんがいると思うと、ついついそちらに意識が向いてしまう。
「英二、いい加減、そろそろ帰ってくれる?、邪魔だよ。」
「ひっでー!!不二、せっかく遊びに来てやってんのにさー・・・最近、ちょっと、冷たいにゃー・・・」
「・・・そんな捨て猫のような顔してもダメだよ。」