第2章 【海水浴!ナンパだホイ!】菊丸英二/夢主
「ああっ!、また落ちた!」
パチパチと音を立てて火花を散らす線香花火が、徐々に静かになったころ、ポトリと落ちてしまった丸くて赤い先端に、これ、どーなってんだよ、そう英二くんが頬をふくらませる。
「ちぇー、また、オレの負けー・・・」
「英二くんが静かに持ってないからですよ?」
一つだけになった、か細い火がサラサラと落ちていく様子を息を潜めて眺める。
ほんの少しの衝撃でもすぐに落ちてしまう線香花火は、確かに英二くんには向いていないかもしれない。
長く続いた方が勝ち、英二くんが言い出したそんな単純な勝負は、今のところ2勝0敗と絶賛私の連勝記録継続中。
英二くんは普段から身体を動かすことが大好きで、逆にじっとしていることは苦手なようで・・・
先程までの手持ちの花火も、両手に持ってクルクルと振り回したりして、危ないですよ!、そう何度もその行為を咎めたりした。
だけど辺り一面に広がる火薬のなんとも懐かしい香りと、煙越しにぼんやりと浮かび上がる英二くんの楽しそうな顔に、不思議と穏やかな気持ちになって、気をつけてくださいね、なんて目を細めた。
「だいたい、線香花火って静かにしんみり終われるから、最後にやるのが定番なんじゃないですか?、それで勝負って言うのも・・・」
「えー!?、これも定番じゃん!、小宮山んちじゃ、やったり・・・しなそうだね・・・」
言いながら、私の家ではそんなことしないって気がついた英二くんの声が小さくなり、お互い苦笑いをしてしまう。
たしかに私の家は、幼い頃に花火をしたことはあったけど、ただキレイねって溜息をつきながら眺めるだけで、競争したり騒いだりなんてしなくて・・・
花火に限らず、私たちは育った環境も、お互いの性格も、何もかも正反対なのに、一緒にいるととても心地よくて・・・