第2章 【海水浴!ナンパだホイ!】菊丸英二/夢主
茜色に染まる空が反射して、青からオレンジにその輝きを変えた水平線は、今では夜の闇へと包まれていた。
防波堤に英二くんとふたり、遠くでぼんやりの光る船のあかりと、空に瞬く星の輝きに目を細める。
「・・・やっぱり、青春台より星が見えますね。」
昼間はあんなにたくさんの人で賑わっていた海辺は、もう誰もいなくなっていて、ただ静かに波の音が繰り返されているだけでのこの空間が、とても贅沢なもののような気がしてしまう。
そっと英二くんの肩に頬を寄せると、彼が優しく肩を引き寄せてくれる。
「電車、何分でしたっけ・・・?」
「んー・・・まだもうちょっと・・・ごめんにゃ、オレが帰りの電車の時間、間違ったせいで・・・」
「いいえ、母には連絡しましたし、大丈夫ですよ?」
苦笑いで英二くんに見せた携帯の画面。
チラリと視線を向けて、それからまたガクリと肩を落とす。
普段の機械音痴にも関わらず、私よりずっと使いこなしているスマホを駆使して、帰りの時刻を調べてくれた英二くんだったけど、肝心の発車時刻を勘違いしていたせいで、みごとに乗り遅れてしまって・・・
目の前で出発してしまった電車を、ただ呆然と眺めるしかなくて・・・
「でもさ、小宮山、もう疲れたよにゃ・・・?」
「それはそうですけど、でも、もう少しこうしていたいです。」
確かに潮風で髪や身体がベタベタで、早く帰ってシャワーを浴びたい気持ちもあるけれど、夜の浜辺に英二くんとふたりきりという、この贅沢な空間をもう少し堪能していたくて・・・
「はぁ・・・オレ、もうこれ以上、小宮山のかーちゃんの信用、失くすわけに行かないのになぁ・・・」
耳元で一段と大きく聞こえたため息、その言葉に顔を上げて目を丸くする。
英二くん、何度、私が「大丈夫」って言っても落ち込んだままだったけど、まさかそんなこと気にしていたなんて・・・